夏越しの大祓といえば、茅の輪くぐりです。
神社の境内に、茅を編んだ直径2~3メートルほどの輪が、設置されます。
これは罪穢れの祓い、災禍厄難除け、無病息災を祈願するものです。
茅の輪の起源は、神代に遡ります。
素戔嗚尊 ( すさのおのみこと ) が備後の国を旅していて、宿を求めたときの話です。
貧しいにもかかわらず、蘇民将来 ( そみんしょうらい ) は、喜んで素戔嗚尊をもてなしました。
数年後、素戔嗚尊は蘇民将来の元を訪れ、「疫病を逃れるために、茅の輪を身につけなさい」 と教えました。
教えを守った蘇民将来は難を逃れ、それ以来、茅の輪を腰につけて無病息災を祈願するようになりました。
時は流れ、江戸時代には、現代のような茅の輪くぐりの形が出来上っていたようです。
茅の輪くぐりには作法がありますので、作法通り、美しく参拝して下さい。
神社によって多少違いがありますが、基本的なものを書いておきます。
茅の輪は、八の字を描くように3回くぐります。
正面で一礼してくぐり、左回りで正面に戻る。
一礼してくぐり、右回りで正面に戻る。
一礼してくぐり、左回りで正面に戻る。
一礼してくぐり、神前に。
これが基本です。
左回りの時は左足で、右回りの時は右足でまたぐというところも、あるようです。
一連の作法の間、祓え言葉を唱えます。
「祓い給へ、清め給へ、守り給へ、幸え給へ」
が最も簡単です。
また、和歌がありますので、それを唱えると、なお良いでしょう。
「水無月の 夏越しの祓え するひとは 千歳の命 延ぶというなり」
これを3回唱えます。
余裕のある人は、二周目には
「思ふ事 皆つきねとて 麻の葉を きりにきりても 祓へつるかな」
三周目に
「宮川の 清き流れに 禊せば 祈れることの 叶わぬはなし」
を、唱えます。
もっと簡単に、「蘇民将来」 を繰り返してもかまいません。
たいていの神社では、茅の輪の横に作法が書かれた看板が設置されています。
それに従って下さい。
茅の輪は、大祓神事が終わってからも、一週間くらい設置されているところが多いようです。
この時期だけのものですから、是非、体験して下さい。
ここで一点だけ、注意事項があります。
時々、記念になのか御利益を求めてか、茅の輪をむしって、持って帰る人がいるようです。
また、茅の輪につけてある紙垂 ( しで ) を、剥がして持って帰ったり。
これらは、絶対にしてはなりません。
茅の輪には、くぐった人の罪穢れが、たっぷり染みこんでいます。
何十人、何百人分の、罪穢れが。
そんなものを持って帰ったら、どんなことになるか、想像するだけでも恐ろしいです。